情シス担当の備忘録

VBA・労働法とか。

【日常】銭湯脱糞馬場ジジィ

私は銭湯に通っている。
好きだから通っているのではなく、単純に必要だから通っている。
私の家には風呂がない。スポーツジムにお風呂だけ入りに行っていた時期もあったが、現在は銭湯通いが気に入っている。
別に風呂があるアパートを借りる金がないわけじゃないし、風呂があるアパートに住んでいた時期もある。
単純に今のボロアパートが気に入っているのだ。


今日は仕事が順調に進んで、めでたく定時に上がれた。
家について、荷物を置いて、着替えて銭湯に向かう。
せっかく定時で上がれたのだから少し家でゆっくりしてもいいのだが、一旦腰を落ち着けると再度立ち上がるのは非常に難しくなってしまうから、ノンストップで銭湯に行くのだ。
歩いて五分で銭湯につく。いつものように番台でお金を払い、脱衣所で服を脱ぎ、浴場に向かう。


浴場に服を着ている人がいた。
珍しいことだが、全くないことではない。
銭湯の店員さんが、何か用事があるときに服を着たまま入ってくることがあるからだ。
その店員さんが、手にタライを持って、湯舟から何かを掬い上げている。
なんだろう。虫でも入ったのかな?しかしここで異変に気付いた。
浴槽の前に妙なオッサン(客)がお尻をおさえながら立っているのだ。
(オッサンはひょろ長でジャイアント馬場のようだった)


店員さんは掬い上げた何かを排水溝に流すと、オッサンに「今後気を付けてね~」などと声をかけている。
オッサンは立ち尽くしている。
なるほど、コイツは浴槽で糞を漏らしたのだ。
しかも、「薬湯」の湯舟で漏らしやがった。
私が行っている銭湯は湯舟がいくつかあり、普通の湯舟やジェットバス等と共に薬湯があった。
私は薬湯が一番のお気に入りなのだ。これはbadだぜ。今日は薬湯に入れないな。
(ただ、店員は浴槽から糞を取り除くと、特に薬湯の湯を入れ替えたりはしなかった。これでいいのか?)


銭湯でオッサンが糞を漏らし、店員さんに湯舟から撤去してもらって立ち尽くしているというのは異常な光景だったが、不思議と私は動揺しなかった。
オッサンは見た目から判断するに70を越えている。
きっと、湯舟の中で屁でもしようと思って勢い余ったんだろう。
オッサン、そういうときもあるよな。さっさと家に帰って奥さんに事情を話し、風呂に入りなおしてくれ。
俺も今日は薬湯はあきらめるよ。
私はそう思いながら、近くの洗い場で頭を流し始めた。


ここで驚くべきことが起こる。
オッサンが私の隣の洗い場に来て、シャワーでケツを洗い始めたのだ。
濃厚な糞のニオイが私を包んだ。
こんなことがあっていいのか。銭湯で脱糞したオッサンに出くわすだけでもとんでもない確率なのに、そのオッサンが隣の洗い場でケツを洗っているなんて、どんな奇跡体験だ。
オッサンのケツからはニオイだけでなく、茶色いアイツも落ちてきた。「脱糞」という単語から「脱」を取ったニオイの根源その本体である。


私は頭を洗いながら、もはや微笑んでいた。
これは夢なのか?銭湯でオッサンが脱糞していて、しかもそのオッサンが隣の洗い場でケツを洗っていて、そのケツからは糞が流れ落ちている。
なんで銭湯でこんなものを見ないといけないんだ。
オッサンのケツから出た茶色いあいつはまるでヴェルタース・オリジナルようだった。なぜならそう、私もまた特別な存在だからです。やかましいわ。


ケツを洗うとオッサンは出ていった。
私はしばし呆然としていたが、気を取り直して頭と体を洗うと、オッサンが脱糞した薬湯以外の湯舟を楽しみ、浴場を出た。


脱衣所では、服を着た脱糞ジジィがマッサージチェアに座っていた。20円を払って使うやつだ。
脱糞ジジィは金を払わず、マッサージチェアをただの椅子として使っていた。それじゃ営業妨害だぜ。
脱糞ジジィは私が着替えやドライヤーを済ませて、さぁ帰ろうというときもまだマッサージチェアに座っていた。


私は家までの道を歩きながら考えた。
オッサンはマッサージチェアに座りながら何を思っていたのだろう。
脱糞してしまい、男としての自信を失っていたのだろうか。
帰るときに番台に座っている店員さんに会わせる顔がないから、座り続けていたのだろうか。
手の中で小銭をチャラチャラさせてたから、周りの客に慰謝料でも払おうとしていたのだろうか。
それともオッサンはもはや認知症が進行しており、ただぼーっとしていただけなのだろう。


とにかく、今日は職場にいる潔癖症の後輩の気持ちがわかった気がした。
公共の場って、何が起こるかわからないな。



※本日の薬湯は「グレープフルーツ&レモングラスの湯」でした。